「コミネス」には大ホールと小ホールの2つのホールがあり、3人の専門の技術スタッフが常駐している。舞台担当の後藤弘人さん、音響担当の鈴木大樹さん、照明担当の古川睦子さんだ。3人は「コミネス」の技術スタッフとして働いていて、「コミネス」を利用してくださる多くの人をいろいろな形でサポートしている。今回はそんな3人に取材の中で「コミネス」の様々な新設備を教えてもらった。
舞台設備には最新の「あれ」も…!?
まず後藤さんに、大ホールの舞台袖を見せていただきました。
天井から吊られていたのはとても大きな音響反射板。この反射板の自慢はやっぱり厚さと重さ。
これらがあるから、中高音域だけでなく低音域までしっかり響かすことができるんです。
さらになんといっても客席の多さも自慢の1つ。大ホールでは最大1,104席、小ホールでも最大321席もの数がある。しかも小ホールは可動式の客席で、平土間形式にすることもできる。使い方は1つに留まらないだろう。また、舞台倉庫には平台や箱馬などの新品が多く保管されている。その倉庫と搬入口をつなぐ扉はとても大きく、大きな荷物も出し入れが簡単にできそうだ。搬入口は舞台袖にも繋がっていて、舞台装置等を直接運ぶこともできる。他にもピアノ専用倉庫があり、案内してくださった後藤さんが調律を行う時もある。
音響はここまで進化した!
次は鈴木さんに、デジタル化が進んだ音響設備を見せていただいた。「コミネス」の音響卓は、どちらのホールもステージを真正面から見ることができる位置にある。演者の演技を見ながら音だしをすることができるためとても便利だ。さらにこの音響卓、iPadで遠隔操作が可能。iPadを持っていけばステージのすぐ近くで音の確認などができる。さらに、機械制御になったため、アナログの音響卓よりもハウリング[※1]を抑える作業等が簡単になったと言う。また、チャンネルリンクという効果により、2つ以上のフェーダーというつまみを同時に動かすことができる。1つしか動かしていないのに2つ以上のフェーダーが動く様子はとても面白かった。鈴木さんはバンド経験もあるそうで、音出しにはとても詳しかった。
市民会館よりも格段に性能アップした照明機器
最後に古川さんが照明機器を見せてくださった。コミネスの照明機器は市民会館の「究極のアナログ」と称されるほどの古さであったものから格段に性能がアップした。市民会館の照明は20シーンほどしか記憶できなかったものが、小ホールで80シーン、大ホールで160シーンほども記憶させることができるそうだ。さらに1シーンに99ページも記憶させることができるため、約2000シーンほども一度に入れ替えて使うことが出来るらしい。
また客席上方にある照明器具も見せていただいた。人の顔よりも少し大きめのライトが十数個ほど付いている。
大ホールには「ピンスポットライト」と呼ばれるライトが2つ設置されており、舞台芸術に更なる表現の可能性を与えると思います。
「コミネス」の新しい挑戦
コミネスの高性能機器を活かしてコミネス館長・プロデューサー志賀野桂一さんは、今後の事業について少し教えてくださった。
「コミネス」の平成28年度最後の集大成として、白河市民全体で作り上げるオペラ「魔笛」の公演を行います。(まだ不慣れな段階でのオペラの公演は)本当は無謀なんですけど…。でも、この公演は市民力の向上やスタッフなどの人材育成を兼ねています。この事業を行うことで、多くの人たちに様々な力がつきます。さらに、このオペラの脚本はアニメ「ドラゴンボールZ」の脚本も担当している小山高生さんです。テーマは近頃話題になってきている「共依存」。ラストも本来の「魔笛」とは違い、オリジナルが強くなっています。オリジナルのラストはその目で確かめてほしいです。
オペラ「魔笛」は、3月20日(月・春分の日)、大ホールでの公演。この事業も乗り越えてコミネスは今後も新たな挑戦を続けていってほしい。最後に、来年度劇団四季の公演も控えていると教えてくださった。コミネスの今後の予定が楽しみだ。
※1 「ハウリング」とは、音に関する現象の1つ。「キーン」「ボー」という、耳をつんざくような音である。くわしくはこちら。