俺でもできるんじゃないか、という機運をこの街に。南相馬市小高のITエンジニア森山貴士さん

団長

団長 高校生
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わたしたち裏庭編集部一行は、2016年12月10日に、南相馬市小高地区に取材に行きました。そこでわたしたちは、小高の高校生グループLLO(LIive Lines Odaka)とともに、キッチンカー「OMSB」(オムスビ)の塗装を手伝いました。「OMSB」プロジェクトメンバーであるITエンジニアの森山さんにお話を伺いました。

南相馬市小高区のJR小高駅前にできたキッチンカー「OMSB」(オムスビ)よりお送りします

 

38回のリテイクをした大学時代

団長
こんにちは。今日はよろしくお願いします。出身地と、出身大学を教えてください。
森山さん
出身は大阪府で、出身大学は立命館大学政策科学部政策科学科です。

取材する団長と、見守る編集長青砥

団長
せいさくかがくか…ではどのようなことをしていたのですか?
森山さん
実際の社会問題の解決手法を探る学問です。例えば、社会の仕組みをモデルにする。なにかを解決するには、意向を調査して、統計を参照して、実態を掴む必要があります。地域での教育が研究テーマで、京都府八幡市を舞台に研究を進めていました。
団長
そんな大学での思い出はなんですか?
森山さん
とにかく厳しい環境で、実際に企画を行うときに提出する企画書を38回もリテイクしたことですね。2日に1回は出した。
編集長
団長、リテイクってなんだかわかりますか?
団長
ちょっとわからないですね…
森山さん
そうだなあ、団長はいま取り組んでいることはありますか?
団長
バスの時刻表のアプリが欲しくて、そのアプリをつくろう!というプロジェクトに取り組んでいます。
森山さん
なんでそれって、団長たちが作らないといけない状況なの?
団長
バス会社に、あんまり困っているっていう意見が出てないから…?
森山さん
それは、困っている人が本当にいないのかもしれないのではないの?
団長
います。バスの遅延があると、送迎の時間がわからなったりする生徒がたくさんいるんです。

白河市表郷で、バス待ちをする高校生

 

森山さん
じゃあそれは、バスの時間がわからないからじゃなくて、遅延情報が必要なんだね。
団長
そうなんです。

取材をしながら団長の相談に乗ってくださる森山さん

森山さん
うん、こういう、「本当に困っている人がいるのか?」「観測範囲が狭すぎるのではないか?」「困っているのはどのタイミングなのか?」「どういう技術なら実現可能なのか?」…「これでいいんじゃないかな」で企画をすすめるとどうしてもアラがあるので、何度も何度も考える。何度もリテイクをするつもりで考えるんです。

 

どうして小高でカフェをはじめるの?

団長
ありがとうございます。ちゃんと受け答えができることが、本気かどうかを表しているんですね。話は変わるのですが、なぜキッチンカー「OMSB」をはじめようと思ったのですか?
森山さん
きっかけは、2016年の3月にハッカソンで出会った花岡さん。花岡さんと意気投合して、一緒につくっていこうということで取り組みをはじめました。

森山さんと、OMSB車内から顔をのぞかせる花岡さん

団長
どうして、OMSBを小高ではじめようと思ったのですか?
森山さん
東京で出店する飲食店の99%は、3年以内につぶれると言われています。競争が非常に激しい。
森山さん
しかしここ小高では、3つのことが言えます。ひとつめは、競合がいないこと。飲食店、ましてカフェはありません。ふたつめは、失敗しても恥ずかしくないこと。人口も少なく、産業もまだ立ち直っていない。この困難な環境での挑戦は、失敗しても恥ずかしくない。みっつめは、そんな困難な環境だからこそ、なんとかしようといろんな工夫が生まれる。その過程でわたしも未経験のことができる。この3つの理由から、小高でやろうと決めました。
団長
OMSBって、なぜオムスビっていうんですか?
森山さん
小高にある小さなコーヒースタンドなので。
Odaka Micro Stand Bar(小高マイクロスタンドバー)を略してOMSB(オムスビ)です。
団長
OMSBでは、どんなことをやっていきますか?
森山さん
コーヒーをまずは販売します。ワークショップを通じて、高校生にも手伝って欲しいと思っています。
団長
どうしてコーヒーなのでしょうか?
森山さん
コーヒー屋をやるのは、WIN-WINの関係を築きたいからです。別に、コーヒーを売って大きな利益を得たいわけではない。若い人が集まれる場所をつくり、コミュニケーションがとれるような場所にしていきたいと思っています。

コーヒーをいれる体験をさせてくれる森山さん

団長
ゆくゆくは、大きなお店にしていくのでしょうか?
森山さん
大きなお店にするというよりは、「真似できるような形にしていく」ことを目指しています。OMSBのコンセプトは「俺でもできるんじゃないか」。大事なのは「なんかコレ、俺でもできるじゃん!」という感じです。試行錯誤をして、若い人たちでなんかやっちゃおうぜ、という機運をこの街につくりたいんです。
森山さん
だから単純に、「カッコイイからはじめよう」と思わせる雰囲気づくりも大事です。最初は趣味ではじめて、それを大きくしていく。自分の能力を持つことこそが、重要なんです。

OMSBのコンセプトは「俺でもできるんじゃないか」!

 

「やってみないとわからない」

編集長
リテイクをして、準備をして、リテイクをして…という経験が大事、という大学時代の森山さんとはちょっと違う考え方のようにも聞こえますね。どうして現在のような、小さなチャレンジをからはじめよう!というような考えに至ったのでしょうか?
森山さん
転機は、社会人2年目の時でしょうか。「考えてはいるけど、でも俺なにもやってねーわ」って気づいて。「考えてから自分でできるようにしよう」って考えていたのですが、このままじゃダメだと。そのときにLean Startup(リーンスタートアップ)という考え方に出会ったんですね。シンプルに言えば、「やってみないとわからない」という考え方です。

小高駅前通り。向かって左手の空き地が、OMSBのいつもの場所になる。

編集長
リーンスタートアップ。
森山さん
そうですね。これはよく言われる、PDCAサイクルと対立する考え方です。PDCAの考え方が適切なときもありますが、PDCAの弱点は、出発点のP、Planを考える時点で、どうしても既に知っている情報からしかはじめられない、ということですね。この前提に立ってしまうと、なにもできなくなってしまうんですよ。小高でカフェ?こんなに人のいないところでできるわけないじゃん!みたいな。
森山さん
そうではなく、いやいや、やってみないとわからないから、やってみよう!という空気を目指したいですから。

小高駅前の空き地でOMSBになるキッチンカーのペイントをお手伝いしました。

編集長
小高や、福島にぴったりの考え方ですね!
団長
OMSBでは、これからどんな風に経営をしていきますか?
森山さん
経営ベースで言えば、従業員を増やしたいですね。働くのは、高校生でもOK。そしてフォロワー、つまり自分が持っている資源を提供してくれる人、お金だったり知識だったり、労力だったりをこの活動のために使いたい、と言ってくれる人を増やしていきたいです。具体的にはまだ決めていないのですが、半年以内には、若い人向けの寺子屋をやってみたいと思っています。
団長
なるほど。今日はありがとうございました!キッチンカーOMSBの活躍を応援しております!

ありがとうございました!

取材の前に、OMSBのペイントもお手伝いしました。

団長’s 取材後記

団長
今回の取材はとても良い経験と収穫がありました。私は、時刻表アプリをつくるボランティアに取り組もうとしているので、森山さんへの取材は、参考になることばかりでした。そこで私が一番役立ていきたいなと思ったことは、リーンスタートアップという考え方です。簡単に言えば、「やってみないとわからない」です。私も、何事にも挑戦していこうと思います。今回取材に協力してくれた森山さん本当にありがとうございました ライター団長さんの記事一覧

森山貴士(Moriyama Takashi)

フリーランスITエンジニア

1986年大阪生まれ。2005年より立命館大学政策科学部に在籍しながら、ITベンチャーでデザイナーとして勤務。2009年よりワークスアプリケーションズにて開発部門、先端研究部門を経て社内の技術向上を目的に勤務。2014年に退職後、南相馬市にてフリーランスのデザイナー、プログラマーとして活動しつつ、市内での教育活動に参加している。

Odaka Micro Stand Bar~オムスビ~(小高マイクロスタンドバー OMSB)

住所

〒979-2121 福島県南相馬市小高区東町1丁目
(JR小高駅前)

営業時間

9:00~15:00

営業日

毎週土・日曜日

URL

Visitor (森山貴士さんのHP)
http://moriyamatakashi.com/
Odaka Micro Stand Bar~オムスビ~
https://www.facebook.com/odakao.msb/