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福島県が発行する総合情報誌「ふくしままっぷ」と、防災ガイドブック「そなえる ふくしま ノート」。これまで制作された情報誌とはひと味もふた味も違うこの2つの冊子は、どうしてふくしまに生まれたのか? 福島県庁総務部広報課の藤田尚将さんと、危機管理部危機管理課の川俣顕太郎さんに伺いました。そこでは震災を経た県が経験したことを活かした工夫と想いがありました。
「ふくしままっぷ」は、表紙から工夫の連続!
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「ふくしままっぷ」の制作を担当した藤田さん。
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「ふくしままっぷ」、とてもインパクトがありますよね。一般的な自治体の情報誌とはずいぶん印象の違うデザインですが、どういったこだわりがあるのですか?
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はい。まず一番に「人目につきやすくする」という目的からこのような表紙にしました。この情報誌を作る際、福島県の公式クリエイティブディレクターの箭内道彦さんに「県外の人に福島県のことを知ってもらえるようなものにしたい」と相談しました。すると、「表紙に知事の写真を載せてもソトから見たらただのおじさん。もっとインパクトのある、手にとってみたくなるようなものにしたほうがいい」とのアドバイスをいただきました。なので、写真を主に使っていた従来の方式をやめ、表紙だけでなくすべてイラストにしてインパクトを出しました。
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なるほど。表紙の半分がキャラクターのイラストというのも、なかなか斬新ですよね。
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これらのイラストは、寄藤文平さんに描いていただきました。寄藤さんは、インフォグラフィック[※1]の手法を用いて、JTの「大人たばこ養成講座」などの広告に携わっているイラストレーターさんです。
※1 インフォグラフィック…情報を簡潔にわかりやすく説明したい時に使われ、標識や地図、電車の路線図などの形で用いられることが多い。現在ではデータなどを視覚化し、それを広告などのグラフィックとして扱い見る人により印象を残す表現として使われたりもしている。詳しくはこちらの記事などを参照。
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表紙に描かれているキャラクターはなんですか?
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あかべこをモチーフにした「ベコ太郎」です。牛なのに、たまに豚だと言われることもあるのですが…(笑)
表紙をめくると「ふくぺでぃあ」といって、福島県の基本的な情報が載っています。福島県の県章は、「ふ」を図案化したものなんですよ。
表紙をめくると「ふくぺでぃあ」といって、福島県の基本的な情報が載っています。福島県の県章は、「ふ」を図案化したものなんですよ。
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ベコ太郎。ベコキングもどこかにいる…!?
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そうなんですね、初めて知りました! 素敵ですね。
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ありがとうございます。県庁の職員からは「それは載せるほどの情報ではないのでは?」との意見もありました。しかし、県民の方でも、県章や県の鳥・木・花について知らない人も多く、「基礎知識」として載せました。
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県のことを知ってもらうのにはまず基礎からですね。確かに、僕も県章の由来は知りませんでした。
「ふくしま」への想い
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次に開いたページにはたくさんのコメントが書いてありますが、ここはどんなページですか?
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さまざまな人の「『ふくしま』への想い」が詰まったページです。広報課でイベント等を行った際に、参加者の方に「『ふくしま』への想い」をアンケート形式で書いていただきました。それを、そのままこのページに載せました。
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確かに、福島県民だけではなくさまざまな地域の人の「想い」が載っていますね。下半分に書いてある復興のためのプロジェクトもイラストのおかげでわかりやすいです。
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他に何か工夫はありますか?
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ページの真ん中を見ていただくと、福島県の地図が三つあるのがわかると思います。下からだんだん地図が大きくなっていますよね。
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本当ですね。これは何を表しているんですか?
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これで、震災後の「人の輪」の広がりを表現しました。
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なるほど。それにしても、このページ、「ベコ太郎」がたくさん登場しますね(笑)
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そうなんです! たくさんの「想い」をベコ太郎のセリフにすることで、読んだ方々に理解されやすくしよう、と心がけました。
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そんな工夫も詰まっていたんですね!
「伝える」ために
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さて、最後のページです。ご当地のヒトやモノがたくさん載っていますね。それにしてもこの「ふくしままっぷ」、使われている色が少ない気がするのですが、それはどうしてですか?
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実は技術的にはカラフルにもできるんです(笑) ですが、「伝える」ということを意識した結果、色数を減らしたと寄藤さんから聞きました。
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すべてを広げたときの大きさはA1版。新聞を広げたときより少し大きめ。
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最後のページは、県内の名産品や名所などが詰め込まれた福島県の地図になっています。このページを制作する際に寄藤さんと相談をしたところ、「福島県民は福島県のことをどう思っているのか」と聞かれ、県民には様々な思いがあるということを伝えました。その結果、多様な風土や文化が特徴の福島県を表現するために、このような形になりました。
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このページで工夫したところはどこですか?
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面白みを加えるために、地図のなかに「ベコキング」を隠してみました。福島県のどこかに1体隠れているので探してみてくださいね。
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この「ふくしままっぷ」はどこに置いてありますか?
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県外向けの情報誌なので実は福島県内にはあまり置いていませんが、連絡して頂ければどこにでも送りますのでぜひよろしくお願いします!
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「ふくしままっぷ」を作って嬉しかったことはありますか?
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東京日本橋に福島県の首都圏情報発信拠点「日本橋ふくしま館 MIDETTE」があります。そこで「ふくしままっぷ」をもらった女性が銀座のチョコレート屋さんで広げていたという話を聞いたことです。その他にもカフェ経営をしている女性が好意で「ふくしままっぷ」をお店で配ってくださったり。こういうことによってつながりが増えていったことも嬉しいですね。
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「裏庭」編集部の活動拠点である「コミュニティ・カフェ EMANON」にも置いてもらいました!
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カウンター下に置いてあります!
「災害が多い地域」だからこそ ~「そなふくノート」~
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続いては「そなえるふくしまノート」の制作に携わった川俣さんのお話です。
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「そなふくノート」の編集に携わった川俣さん。
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「そなえるふくしまノート」とはどのようなものなのですか?
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「そなえるふくしまノート」、通称「そなふくノート」は、県政史上初めて作られた防災ガイドです。
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どのようにして制作が開始されたのですか?
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一番の目的は、県内の全世帯に配布すること。そのためにコストを抑えることや配布方法、捨てられずに保存してもらえる方法を考えました。
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ノートの内容について教えてください。
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普段から災害に対して備えておくことと、実際に災害が起きた時に身を守る行動の2部構成になっています。キビタンとベコ太郎がナビゲートをする形になっていて、ユーモアのあるイラストで、楽しく読み進められると思います。
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工夫した点はありますか?
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「そなふくノート」を制作する際に参考にした他の都道府県の防災ガイドがあったのですが、読むのに抵抗を感じるほど分厚い本でした。今回は、まずは手にとって読んでもらうための、簡単で基本的な内容にしようと思いました。
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津波のページ。このノートはホチキスで留められるような厚さ(36ページ)しかないが、必要な情報はほとんど網羅されている。
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福島県は様々な災害が起こりやすい地域なので、全ての情報を網羅したいのですが、そうすると情報量が多くなってしまいます。なので、情報量を抑えつつ重要なことを伝えるために、「ふくしままっぷ」でもご協力いただいた寄藤文平さんにイラストを描いて頂きました。
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苦労した点はありますか?
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掲載する情報や使用する語句を、県庁の他の課と調整するのに苦労しました。難しい言葉を使わないように工夫しています。また、編集は私一人でやっていたので大変でしたが、楽しくもありました。
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「そなふくノート」について説明する川俣さん(イラスト)
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どんな人に読んでほしいですか?
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私は、家族で一緒にこのノートを開いて読んで欲しいと思います。2011年の震災時には携帯が不通になり、連絡がとれなかった方が多くいらっしゃいました。災害時の連絡方法や避難場所をみんなで確認して欲しいです。また、高校生の友だち同士でも、通学中などに災害が起こったらどうすればいいかを、少しでも話し合ってくれたら嬉しいです。
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これからやっていきたいことはありますか?
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福島県庁危機管理課では、『シェイクアウトふくしま』という防災訓練を開催しています。
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なるほど。これはどういったイベントなのですか?
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簡単にいうと、福島県民で一斉に防災訓練をしようということです。
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何か大掛かりに聞こえますが、準備等は必要なのですか?
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いえ、実施時間になったらその場で1分間、地震から身を守るための行動をしていただくだけです。
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それならたくさんの人に実施してもらえそうですね!
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はい。さらに、「プラスワン訓練」として、備蓄品や避難経路の確認等も行なってもらえたら、なお、いいですね!
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ありがとうございます。これからも「そなふくノート」をつかった訓練があれば、ぼくらの学校等でも実施の呼びかけをしたいですね。
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はい。たくさんの福島県民の皆さんの参加をお待ちしています! それ以外にも、今日の取材のような、「そなふくノート」を使った防災講座をやりたいですね。学校や企業に呼んでもらい、防災について伝えていきたいです。福島県は、いつでもお声かけを待っています!
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こちらも「コミュニティ・カフェ EMANON」にて配布中です!
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藤田さん、川俣さん、ありがとうございました!
編集後記
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今回の取材は、「伝える」ことを仕事にしている方への取材ということで、お二方の記事を作成するためだけでなく、「伝える」という同じテーマで活動している僕たちにも参考となるようなお話をたくさん聞くことができました。また、複数のライターで一つの記事を書き上げるというのは初めてだったので、いい経験になりました。
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今回の取材で、私が福島県のこととして知っている情報はごく一部なのだと改めて実感しました。「ふくしままっぷ」も、「そなふくノート」も、県民のために県庁の職員さん方ががんばってくださっている証拠なのだと思います。今回の記事で少しでも多くの人にこれらのことを知ってもらいたいです。
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今回の取材で、震災後の福島県のために一体となって仕事をするかっこいい大人たちの姿を知ることができました。取材をするまでは、「ふくしままっぷ」と「そなふくノート」のどちらも知らなかったのですが、製作に携わった県職員の方に、県民からは見えないところでの努力や工夫を聞くことができたのは貴重な体験でした。