南相馬市小高区。2016年7月12日に居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示が解除されるも、震災以前のような活気はいまだ戻っていないのが現状だ。そんな中で、「LLO(LIVE LINES ODAKA)」という高校生団体が、小高のために頑張っている。今回はそんな高校生たちを代表して、代表・伏見空翠さん(原町高2年)、川崎蒼羽さん(小高工業高2年)、亀田梢さん(原町高2年)が我々のインタビューに応じてくれた。
小高を活気づけるー高校生団体「LLO」とは?
まずは「LIVE LINES ODAKA」の名前の由来を教えてください。
はじめは4人[※1]で桜の聖母(短大)で行われたプレゼンに参加して、そこで東大生の人に会って、「小高についての事業に参加してみないか」と言われて、結成しました。名前は、佐藤くん[※1]が、「名前とかいろいろ調べてみたんだけどさ、『LIVE LINES ODAKA』ってどう? なんか、”LIVE LINES” って、『活気づける』って意味なんだって。これいいんじゃない?」ってことで名前はつきました。
その「プレゼン」ってどんな感じのものだったんですか。
若者がたくさん集まって、いろいろな提案をするような場でした。
ちなみに私たちは、震災の前に11月にやっていた鼓笛を復活させようとか、毎日やっているスーパーがなかったから[※2]、高校生で運営しようみたいなことを言ったんですけど…
でもそれって現実的に無理だよね(笑)
まあ若者の自由な発想をプレゼンするみたいな感じの集まりだったから、これ以外にも無茶な感じの提案はいろいろあったけどね(笑)
なるほど。ちなみに、今現在は11人で活動している[※3]ということですが、4人の状態からどのようにして人を増やしていったんですか。
(小高)工業(高校)は、12月に生徒会役員に対して先生から説明があって、年明けすぐくらいに入りました。
原町(高校)は基本的に僕が誘いました。放送部の後藤君[※5]は、僕たちにインタビューをしてくれた時に、「おもしろそうだし僕も入りたい!」みたいな感じで声をかけてくれて、それで入ったんですよ。
ありがとうございます。次は具体的な活動について聞かせてください。
んじゃあ、ここはやっぱり受付嬢(梢さん)から…
ええと、今までの活動としては、「おだから図鑑」というのを作ったり…
おだから図鑑?
はい。「小高」と「お宝」という言葉をかけて、小高の復興に向けて頑張っている人たちを取材してまとめたんですね。あとは、その活動の中で「松月堂」っていうお菓子屋さんを取材させてもらって、そのときに、秋祭りで出す商品を一緒に開発しよう[※4]ってなったり、夏休みには石巻に視察研修に行って、情報交換をしたり、わたしたちより復興が進んでいる地域ということで、復興の参考にしようということでお話を伺ったりしました。そして、それを11月の市長プレゼンで報告した…というのが今年度かな…
精力的に活動をなさっているんですね。今後はどのような活動をしていく予定ですか。
まずは、これから学校が再開するということで、通学路上の放射線量をマップにしたいなと。今までも簡易版は作ってきたんですけど、本格的に作り直したいなと思っています。あとは、空き家の活用にも取り組んでみたいですね。
「将来的に住む若い世代が復興をしていく」
「LIVE LINES ODAKA」も結成から1年がたつと思うんですけど、活動をはじめてから周辺の友達から何か言われることってありましたか。
…僕は全然ないな~。(小高)工業(高校)は知名度0かもしれない(笑)
うそ! マジで!?
うん…まあもともと先生から言われて入ったくらいだし、先生に言われなかったら入ってなかったと思う。
そっか…リーダーは?
秋祭りをやったときに、同級生の家族とかも来てくださって。そのときに「すごいね」とか「頑張って」とかっては言われましたね。
やっぱり同級生からは「楽しそうだね」って言われることは多いですね。
実際に活動は楽しいですか。
楽しいです。実際に視察研修に行った時も、ほかの地域を見ることに興味があったりしたので、もちろんいろんなことを学ぶこともできたんですけど、夜ホテルに入るとみんなでゆる~く遊んだりとか(笑)
いいな~。
僕自身は相馬の出身ってこともあって、実は小高のことってよく知らなくて。この活動を通して小高についても学べるのがいいですね。
でも、活動を楽しそうって思ってくれる人がいるのに、人は増やさないんですか。
人が多い方が楽しいし、入ってほしいとは思う。あとしいて言うなら、女子が受付嬢と雪姉[※5]しかいなくて、重苦しい考えしか出てこないこともあって…。女子がほしいな~って思いはありますね。
やっぱり入りたいって人はいるんだけど、なんていうか…よくも悪くもこのメンバーで輪ができすぎて、もしかしたら入りにくいかもしれない…。入ってくれるのはとてもうれしいし、やっぱり意見を持って考えたら、それをどう実行するかだと思うんですよ。復興は私たち若い世代がしていかないと、将来的にもここに住むのは私たちの世代なので。
「活動を通して積極的な人になった」
次の質問いいですか? 1年近く活動を行ってきた中で、自分の気持ち…というか、意識の変化とかありましたか。
やっぱり僕はさっきも言ったけど小高の出身ではないので、なんか、地元で頑張っている人たちを見て、驚いたというか、やっぱり自分の中で意識は変わったな…
なんか、この活動をする前は、自分にしか目がないっていうか、なんか受動的だったな…って。でも、この活動を通して、周りにも目を向けられるようになって、積極的になってきたかな…って。そこが気持ちの変化かな。
何をしたくてこの活動に参加したかっていうと、まあ小高に住んでいた若い人って、避難の影響でばらばらになっちゃって、もう住むことってほとんど無理だと思うの。だから、何かしらの機会で遊びに来てほしいな…って思って。
実際に来てくれたっていう実感ってある?
秋祭りをやったときには、同級生とかも来てくれて、やっぱりうれしかったな。
「小高に興味を持ってもらうことが1番」
それじゃあ、最後に1つ。今日[※5]も常磐線が開通して、私たちみたいな中通りや会津の人が見ると復興が少しずつでも進んでいると思うんだけど、実感としてはどう?
確かに交通面では進んだけど、それでも人が戻ってこない。人が戻ってきてなんぼだから…。戻ってきた人もお年寄りが多くて、若者が中心で動いてほしいな、って。
うん。お年寄りがやってもどうしてもお年寄り臭くなっちゃうのよね。
イベントの企画もそうだしね。
蒼羽くんは?
うーん、まだわからないかな…
わからない…?
うん、だってまだ学校とかも再開してないし、再開してみないとわからないこともあるかなって。学校が再開すれば、少なからず賑わいは戻ると思うし、やっぱり興味を持ってもらってきてもらうのが1番だね。LLOがそのきっかけになるといいな。
ソルティー’s 取材後記
我々は当たり前のようにいつもの生活を取り戻しつつあるが、避難指示が出てしまった地域では、たとえ解除されたとしても、なかなかいつもの生活を取り戻せていないのが現状だ。そんなときに結成された「LLO」は、その名の通り「小高を活気づける」ということで始まったプロジェクトである。しかし、彼らの力強い言葉からは、まるで未来に向けて着実に歩き出そうとする小高の「象徴」のような存在でありたいという熱い思いが感じられた。彼らの歩んできた足跡、そしてこれから歩む道のりの1つ1つは、小高の復興、ひいては福島県の復興をリードするものとなるだろう。「小高のために、これからもLLOとして頑張っていきます!」と梢さん。大人にはないフレッシュな力を発揮し、「LLO」は今日も様々な活動を行い、小高のために駆け抜けている。
※1 この4人は、空翠、梢、林崎雪音(はやしざき・ゆきね)、「LIVE LINES ODAKA」名付け親の佐藤嶺至(さとう・りょうじ)。
※2 取材当時、国道6号線沿いにファミリーマートが再開していた。しかし、スーパーの規模となると1軒もなかった。
※3 2017年1月29日現在、新メンバー1人を加え12人で活動中。
※4 このお菓子「結芽(ゆめ)」は、松月堂・イオン相馬店などで販売中。また、電話での注文を受け付けている。詳しくは松月堂 TEL 0244-23-3636 へ。
※5 取材日当日、常磐線の相馬‐浜吉田が再開通。震災以来5年9か月ぶり。
LIVE LINES ODAKA(ライブ・ラインズ・オダカ)
2016年4月に結成。南相馬市の事業として、小高区役所と小高地域構想ワーキンググループが協働で運営している。月に1度、市内の高校生が高校の枠を超えて集まり、小高を舞台に実践活動を展開。
LLO公式ツイッターはこちら
インタビューに協力いただいた方々
川崎 蒼羽(Kawasaki Aoba)
県立小高工業高校(2017年4月より小高産業技術高)2年。生徒会副会長をしている。(写真左)
伏見 空翠(Fushimi Kusui)
県立原町高校2年。LLO代表を務める。趣味はゴルフやバイオリンなど。将来は政治家を目指している。(写真中央)
亀田 梢(Kameta Kozue)
県立原町高校2年、茶道部所属。LLO広告担当。小高区出身。震災をきっかけに医療に興味を持ち、臨床検査技師を目指している。(写真右)