人と人をつなぐを場所 ー(元)二本松市地域おこし協力隊武藤さんがカフェ SIRoを開くまで

れな

れな 高校生
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明るい笑顔が印象的な、元二本松市地域おこし協力隊の武藤琴美さん。彼女は今、高校生や若者が気軽に立ち寄れるカフェを作ろうとしています。今回はそんな武藤さんに、地域おこし協力隊だったころの話や、今後の夢などについてお聞きしました。

武藤さんのいる「二本松市」とは

二本松の菊人形。(二本松市公式ホームページより)

まほし
今回取材に行ったのは福島県二本松市。中通りの北側、福島市と郡山市の間にある、人口約55,000人の都市です。
市内には安達太良山や岳温泉などもあり、また毎年秋には霞ヶ城公園で「二本松の菊人形」というイベントが開催され、多くの人でにぎわいます。

二本松市の位置。(二本松市公式ホームページより)

まほし
二本松市は、2005年に、当時までの二本松市と、安達郡安達町、岩代町、東和町が合併して新しい二本松市となりました。武藤さんは旧二本松市のご出身です。

協力隊になるまで

れな
まずは、武藤さんの高校生時代のお話を聞かせてください。
武藤さん
家と学校を往復するだけの毎日で、本当につまらなかったんですよね。当時は高校生がふらっと寄れるようなお店がなかったから。寄り道できるところが本当になくて、行くとしても男女共生センターぐらいしかなかったです(笑) 本当に、何もなくてつまらなかった高校生時代でした。
れな
高校を卒業してからはどうしていたのですか?
武藤さん
「就職する」というイメージがなく、進学することをきっかけに上京しました。都会で流れるような生活を送っていました。
れな
専門学校ではどのようなことを勉強していたのですか?
武藤さん
デザインの勉強をしていたのですが、入ってから気づいたんですけど、やりたいことと少し違ったんですよね…。デザインをするのも好きだけど人と話すのも好き。ずっとこのままデザインの勉強をしていていいのか、とふと思いました。

そうして数年東京に住んだ武藤さん。偶然にも、二本松市に帰省していたとき、東日本大震災に遭遇する。

武藤さん
震災後、地元でボランティアに参加しました。そこで、教育への関心を深め、子どもと大人をつなぐ役割を持ちたいと思いNPOで勤務しました。

気さくに話をしてくださった武藤さん

武藤さん
そこでは子どもたちに夢や目標を持つことや自分の役割を見つけることの大切さを教えることがあったんです。でも、自分を振り返ったとき、そういった「将来につながることを知る」ためのツールがなかったんだなって気づいたんですよね。
まほし
そうなんですね。学生時代につまらなさを感じていたわけは、きっとこのようなことが原因だったのかもしれないですね。
武藤さん
そうですね。でも、このことをきっかけに、人と人とをつなぐ支援がしたいと考えるようになったんです。

その後、福島県にUターン。2014年10月に二本松市岩代地域の地域おこし協力隊に着任した。

協力隊になってから

二本松市の名産品・西念寺柿

まほし
そこから地域おこし協力隊になったとのことですが、活動をふりかえってみていかがでしたか?
武藤さん
やっぱりはじめはよくも悪くも「よそ者の無鉄砲さ」があったと思いますね。
れな
「よそ者の無鉄砲さ」…?
武藤さん
というのも、私が協力隊になった年から「西念寺柿[※1]」を推していこうという流れが地域内で始まったんですね。会津見不知柿(あいづみしらずがき)のもとになった柿なので、その歴史を残そうと。でも西念寺柿は渋柿だから食べられなくて(笑) どうしようってなったときに、「地域外でもレシピ開発ができるのであれば」と思って、白河市のコミュニティ・カフェ EMANONさんに協力をお願いしました。

そうしてできたのが、「二本松産西念寺柿のまるごとパイ」だ。

二本松産西念寺柿のまるごとパイ

れな
「地域おこし」というと、すべてをその地域で行うっていう印象がありますよね。
まほし
確かに、あえてその地域の外でこのような活動を行うのはとても斬新だと思います。
武藤さん
そうですよね(笑) EMANONで「西念寺柿のまるごとパイ」を作ったときは、「なんでこっち(二本松)で売らないんだ」って怒られたんですけど、でもそのことによって地元について考えさせられたんですよね。わざわざ白河市まで食べに行った公務員の方もいらっしゃいました。その方は、「地元の声を拾うのが苦手だから、自分たちもこういう活動をやるべきだ」とおっしゃっていました。

※1 西念寺柿…戦国時代の天正年間(1573~1593)に小浜城(今の二本松市岩代地区)の城主だった大内定綱が、西念寺住職の夕安(せきあん)を中国に派遣したことにより、現在の岩代地区に持ち込まれたとされている。また、会津見不知柿(あいづみしらずがき)の原種で、岩代地区の特産品でもある。しかし、西念寺柿は渋柿であり、さらに渋抜きをしても加熱すると渋が戻ってしまうため、スイーツへの加工が難しく、あまり活用されていなかった。

協力隊を終えて

「地域おこし協力隊」には3年間という任期があり、武藤さんは2017年9月末でその任期を満了した。

れな
協力隊の活動を通してどのように感じましたか?
武藤さん
自分がまだ学生だった時代は、将来について考えるときに、(給料などの)具体的な話を聞く機会がなかったり、学校が終わっても寄り道できる場所がなかったりしたこともあって、高校生や若者の役に立ちたいとの思いが強くなりましたね。
まほし
現在はどのようなことをしたいと考えていますか?
武藤さん
高校生や若者が気軽に立ち寄って集えるようなカフェを作りたいと考えています。その空間を通して、学生とはたらく大人のコミュニティをつなげて、学校では学べないようなことを吸収してほしいと思っています。協力隊時代に知り合った方たちと協力しながら、自分のペースでやっていけたらと思います。

2018年6月29日から、二本松市市民交流センター内に、「コミュニティ・カフェ SIRo」がオープン。武藤さんに会いに、二本松に行ってみよう。

武藤さん、ありがとうございました!

取材後記

れな
初めて白河の外に出ての取材だったので緊張しましたが、武藤さんが明るくフレンドリーな方だったので、楽しく取材することができました。また、この取材がなければ二本松に行くことも、二本松について知ることもできなかったと思うので、とても貴重な体験になりました。
「コミュニティ・カフェ SIRo」に行って、ガレットを食べながらまた武藤さんとお話したいです!
まほし
眠っていた西念寺柿の魅力を引き出し、更に新たな挑戦に取り組もうとしている武藤さん。地域おこしにも様々なアプローチの仕方があることに驚きました。どんなに小さな街でも大きな可能性が眠っているのだと感じました。それをいかに面白く、受け入れやすくしていくのかが地域おこし協力隊の腕の見せ所なのだと思いました。

武藤 琴美(Muto Kotomi)

元・二本松市地域おこし協力隊(岩代地区)/コミュニティ・カフェ SIRo店主

1988年生まれ、福島県二本松市出身。文化服装学院を卒業後、東京で仕事をするも、震災後の二本松市でのボランティアをきっかけにUターンし、2014年10月に二本松市岩代地区の地域おこし協力隊に着任。2017年9月に任期を満了後、学生時代に欲しいと思っていた「寄り道ができる空間」を作りたいと思い、2018年6月、「コミュニティ・カフェ SIRo」をオープン。岩代地区の産品を売ったり、他地域とのコラボをしたりも行っている。

コミュニティ・カフェ SIRo


2018年6月29日、二本松市市民交流センター内にオープン。岩代地域と学生をひいきするカフェになっている。名前の由来は「岩代(いわしろ)」の「しろ」より。「これから地域も人もまだまだきっと成長していくんだろう」という思いを込め、”o”を小文字にして、不完全さを出している。主な商品は、道の駅さくらの郷が数年前から取り組んでいる岩代高原産そば粉を使用したガレットと、そば茶・甘酒の販売。ガレットは、岩代産のそば粉を使った生地に、旬な食材をサンドしている。具材は季節によって変動する。

場所

〒964-0917 福島県二本松市本町2丁目3-1 二本松市市民交流センター3階ラウンジ(JR東北本線二本松駅から徒歩1分)

営業時間

水曜日~金曜日…15:00~18:00
土曜日…10:00~18:00

※ガレット、そば茶、甘酒ともに、なくなり次第終了

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