そもそも「シンポジウム」って?
編集長! そもそも「シンポジウム」とはなんですか?
なかでも、「一緒に活動してくれる高校生」そして「全国で高校生と地域の協働を仕掛けているオトナ」。そんな人たちとたくさん出会うことができたことに、私自身わくわくしてきましたし、活動に確かなニーズがあることを確信してきました。
今回のシンポジウムでは、地域と高校生との協働というテーマで真剣な議論をし、活動を発表してもらおうと思いました。そうすることで、私自身が様々な人との出会いから感じた、地域で活動することへの肯定感や必要性、そして勇気を、会場に来てくれる高校生、そしてオトナたちとシェアできると思ったからです。
「高校生」からはじまる地方創生―一般社団法人「i.club」代表理事・小川悠さん
「基調講演」を行ってくださったのは、一般社団法人「i.club」の代表を務めていらっしゃる、小川悠さん。
小川さんは神奈川県横浜市のご出身。2013年に東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了し、地域における若者の地域離れの解決のための新たな仕組みづくりをするため、「i.club」を立ち上げたのだそう。
日本の高校生40人に3つの質問をしました。未来をつくるアイデアを出すことは、40人中35人が大事だといいました。また、40人中5人が、アイデアを出すことが好きだと答えました。しかし、アイデアを出すことに自信はある人は、40人中0人でした。衝撃的です。未来をつくるアイデアを出すということについて、みんなが、才能だ、センスだとごまかしてしまうのです。ぼくも高校生のときそうでした。
でもそもそも皆さんは、学校でそれを学んだことがないのです。学校の先生が、未来について聞くことはありませんし、先生が「わからない」ということもない。でも、未来については答えなどはないのです。そこで、未来について考えるための動機付けをすることが大事で、未来をつくるアイデアを出すための作法を「イノベーション教育」と言っています。
なまり節ラー油をつくったらメディアで注目されました。これから、ほかのものとの差別化をする鍵は「ストーリー」です。モデルは高校生にイノベーション教育をして、そのアイデアを大人にプレゼンします。将来の希望である子どもが一所懸命プレゼンするので、大人も聞きます。これこそが「地方創生」で、このようなモデルづくりが大事ではないかと思います。高校生にイノベーション教育を提供します。そしてイノベーションをするのは大人なのです。大人がしないと子どもへの希望がつくれません。この流れをつくる仕組みづくりに協力しています。
まず「つなげる」ということで、しっかりとしたコンソーシアム[※1]をつくりました。高校生が中心にいて、商工会議所や町内企業と、デザインができる芸術村の協議体を作りました。
「つづける」では、お麩をラスクにして西会津町でいちばん売れています。だいたいは作ったら終わりですが、続けることが大事です。いまは車麩のブランディングをしています。さらに高校で年間プログラムをしています。
そして「つみあげる」。私は中学生に対しても「アントレプレナーシップスクール[※2]」を、総合的な学習の時間で、中学3年生へ、年に2日間行っています。また「若者街づくりプロジェクト[※3]」、そして「まちひとしごと[※4]」。ここまでしないと、中学生から30代の流れを作れないと思います。作っていける町が地方創生できる町だと思います。「つなげる」、「つづける」、「つみあげる」を町としてすることが大事です。
※1 コンソーシアム…協会、組合。多く、特定の目的の為に集まった企業連合のことを言う。(広辞苑より)
※2 アントレプレナーシップスクール…企業家精神や、新しい事業の創造意欲に燃え、高いリスクに果敢に挑む姿勢を育てる講座。(デジタル大辞泉より)
※3 若者街づくりプロジェクト…西会津町の20代から30代の方々が行っている、未来を創る活動。
※4 まちひとしごと…西会津町の20~70代が一緒になって街づくりを考える活動。
教育現場からー2人のOB校長先生から
もう一つは、高校生、若者の自己肯定感が少ないということ。アメリカや中国など、諸外国に比べて、日本の高校生は自尊心を持っている割合が少ないという結果が出ています。自分には人並みに能力があると感じている高校生が、プライドを持っていると感じている高校生が、少ない。どのように自己肯定感を持たせるのか、これは大事なことだと思うので、実践したいと思います。
「何もない」を原点に―高校生の「ここまで」と「これから」/白河市・「裏庭」編集部
後半は、高校生の活動についての発表。まずはじめは白河市・「裏庭」編集部の代表として、もえ・ゆうな・あさぴよ・こばしょうの4人が登壇した。
これはある高校生のスマホのアプリごとのバッテリー消費量ですが、上位は動画サイトやSNSで、ウェブサイトを見るためのアプリの消費量は全体の5%、能動的に閲覧しなければならないウェブサイトではだめだということになりました。
「目的意識なく、いつもと違うルートで、スタートとゴールがあり、特別ではない買い食いができて、ちょっと笑顔になれる。」
終了後、「裏庭」編集部の4人にインタビューを行った。
「若い」からこそ「経験」を―南相馬市・「Live Lines Odaka」
続いて、南相馬市小高区で活動をしている「Live Lines Odaka」の皆さんが発表を行った。
僕自身の理想を言います。水畑さん、小高ってどこにあると思いますか。
僕たちはこういう活動をしてきました。大人のみなさんも、若いからだめというのではなく、若いから経験をさせてあげてください。課題も宿題も、言われた通りにしかしません。言われた通りにしかさせないのです。それではだめだと思います。
終了後、LLOを代表して発表をした4人にインタビューを行った。
※5 高校生見守り隊…高齢者の方と交流したり、お手伝いを行ったりする活動。2017年1月にスタート。
※6 「LLO」公式Twitterによると、2017年8月25日現在、1年生の後輩が8人加入してくれたそう。
LLOは2代目が入るよ!!!
なんと8人も入るよ!!
全員1年生だよ!!
とても嬉しいことだね!!by感極まって泣きそうな、もうちょいで引退の代表
— 【公式】LLO (@LiveLinesOdaka) 2017年8月25日
福島の魅力を知ってほしい―白河実業高校農業科畜産専攻班
最後に発表を行ったのは、福島県立白河実業高等学校農業科で、畜産について学んでいる「畜産専攻班」のみなさん。
5つの専攻班(畜産・野菜・果樹・作物・草花)で、実習や課題研究に取り組んでいます。1~2年生は5つの班をローテーションで行い、3年生は1つの班を選択して行います。
ニワトリについて説明します。まず除糞を行い、次に集卵をし、卵をきれいに拭いてパック詰めをします。卵は重さなどでサイズが決まるので量ったあとに詰めます。販売は、白河市が中心です。飼育しているニワトリは「ボリスブラウン」という種類です。性格が温厚で、卵をたくさん生みます。私たちの卵は地域の人にとても人気です。
管理のほかにも、資格取得のための勉強や、家畜審査競技大会のための勉強会もしています。平成29年度には乳牛の部で最優秀賞をとることができました。そのほかにも意見研究発表大会では3人の生徒が優秀賞に輝きました。
私たちの学校に加工施設がないので、おいしさを広く知ってもらうことができません。そこで青砥さんの紹介で今日のシンポジウムに参加しました。卵を使って加工食品を開発し、多くの人に福島の魅力を知ってもらいたいです。幼い子どもたちにも食の安全や大切さを知ってもらいたいです。(「畜産」という仕事の)やりがいも知ってもらいたいです。そのために、私たちには協力者が必要です。賛同してくださる方、ぜひ白河実業高校にいらしてください!
ライターの編集後記―これからの「地域」と「高校生」、そして「大人」の在り方
編集部注:この公開シンポジウムは、「高校生世代と地域協働ーふくしまからはじめよう、地域での実践教育ー」として、2017年7月22日白河市のマイタウン白河にて開催されました(平成29年度福島県教育委員会子どもがふみだすふくしま復興体験応援事業「しらかわの高校生による6次化マルシェプロジェクト」)。